遠吠えクラブ
「すごく簡単なの。
私が何もつくりたくない、とことん怠けたい時の料理」
と言うのですごく期待してメモをとろうとしたら
「まず玉葱を刻んで」
と始めたので、こりゃダメだと思った。
 玉葱を刻むなんて、そこまでやる気が出たことなんて人生で一度もない。

 それがやる気のない時の料理だとしたら、美夏がやる気のある料理は羽純にとって、遠い遠い別の宇宙の料理だった。

 でも千紘は違った。
 料理への興味は美夏に近かったが、実力は羽純に近かったせいもあり、本当に、羽純にでもできる簡単な料理を教えてくれた。

「『チンたら梅』って名づけたんだけど、鱈を買って来て皿にのせて、永谷園の梅干し茶漬けの素をかけて、ラップして電子レンジでチンするだけ。
鱈にしめじとか添えたらもう、ゴージャスといっても過言じゃないよ」
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