遠吠えクラブ
 馬鹿だと思われるだろうけど、それでも羽純は聡をあきらめきれなかった。

 もうずっと、一生、不倫でもいいから、離れたくなかった。 
 
 どうしてあんなパッとしない男にそこまで、と思われるかもしれない。

 自分でもわからないのだ。いっしょにいる時は、こんな地味顔の男のどこに自分はここまで惚れているのだろうと不思議に思ってつくづく眺めてしまう。

 だが少しでも離れていると恋しくて寂しくて、身をよじるように切なくなる。聡には羽純の中の奥深い飢餓感をかきたてる、不思議ななにかがあるのだ。

 その苦しさと恋しさは、つきあって一年目よりも二年目、二年目より三年目にさらに濃くなっていった。

 羽純は時々、自分の聡への執着の深さが恐ろしくなるくらいだった。

 会えない時はいつも、聡の小さな癖や表情に、苦しいほど飢えていた。

 そして羽純は少しずつ、気づき始める。ある種の女にとって、聡が魔性の男であることに。
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