遠吠えクラブ
聡は決して、好色でもテクニシャンでも精力絶倫でもない(むしろ、そっちの興味は薄いほうかもしれないくらいだ)。
だけど聡の二人の妻以外にも、聡が好きで追いかけ続け、聡がやっとのことで逃げ切った女、でもまだ聡が忘れられないで苦しみ続けている女がぞろぞろいることに、羽純はある時から気づいた。
今では、聡に溺れやすい女がすぐにわかる妙な嗅覚が身についてしまったほどだ。
聡はなにしろ平凡な容姿なので、決して一目惚れされることはない。でも職場で時々言葉をかわしたり、なにかで接触を持ったりすると、そうした女たちはたちまち磁場にはまりこんでしまう。そして、自分こそが聡の運命の相手だと信じ込んでしまうのだ。
いったいなぜなのだろう。
羽純はひそかに、聡はその種の女たちにとって、触媒のような存在なのではないかと思うことがある。
触媒は、それ自身は変化しないが、触れたものの反応の速度をあげる物質だと何かで読んだ時、これはまさに聡のことだと思った。
だけど聡の二人の妻以外にも、聡が好きで追いかけ続け、聡がやっとのことで逃げ切った女、でもまだ聡が忘れられないで苦しみ続けている女がぞろぞろいることに、羽純はある時から気づいた。
今では、聡に溺れやすい女がすぐにわかる妙な嗅覚が身についてしまったほどだ。
聡はなにしろ平凡な容姿なので、決して一目惚れされることはない。でも職場で時々言葉をかわしたり、なにかで接触を持ったりすると、そうした女たちはたちまち磁場にはまりこんでしまう。そして、自分こそが聡の運命の相手だと信じ込んでしまうのだ。
いったいなぜなのだろう。
羽純はひそかに、聡はその種の女たちにとって、触媒のような存在なのではないかと思うことがある。
触媒は、それ自身は変化しないが、触れたものの反応の速度をあげる物質だと何かで読んだ時、これはまさに聡のことだと思った。