遠吠えクラブ
料理のことで英毅と羽純がお互いに神経をすり減らしていた頃、遊は生まれた。
育児中は食事どころではなく、羽純はむしろ、解放された思いだった。
だが意外にも英毅との生活がいよいよ荒んできたのは、生まれた遊がだんだん聡に似て来た頃からではなかっただろうか。
急には聡と別れ切れなくて、細々と続いていたから、どちらの子でもおかしくはなかったのだが。
それに薄々気がついていたからこそ英毅は、しょっちゅう聡を家に呼んだのかもしれない。聡も、断ることで二人の関係を怪しまれるのを逆に恐れ、来ていたのかもしれない。
それとも、日に日に自分に似て来る遊に、何か特別なものを感じたのだろうか。
どちらでもよかった。
目の前に聡がいるのがやはり嬉しかった。
英毅が席をはずした一瞬の隙に、聡の頬にそっと指をすべらせたこともある。
そんな時の聡の、びっくりしたような泣きそうな表情を見ると、捨てたはずの恋しさがまた溢れ出て、蹴られたように胸が痛んで涙がにじんだ。
そんな頃だった、美夏が聡と結婚すると聞いたのは。
育児中は食事どころではなく、羽純はむしろ、解放された思いだった。
だが意外にも英毅との生活がいよいよ荒んできたのは、生まれた遊がだんだん聡に似て来た頃からではなかっただろうか。
急には聡と別れ切れなくて、細々と続いていたから、どちらの子でもおかしくはなかったのだが。
それに薄々気がついていたからこそ英毅は、しょっちゅう聡を家に呼んだのかもしれない。聡も、断ることで二人の関係を怪しまれるのを逆に恐れ、来ていたのかもしれない。
それとも、日に日に自分に似て来る遊に、何か特別なものを感じたのだろうか。
どちらでもよかった。
目の前に聡がいるのがやはり嬉しかった。
英毅が席をはずした一瞬の隙に、聡の頬にそっと指をすべらせたこともある。
そんな時の聡の、びっくりしたような泣きそうな表情を見ると、捨てたはずの恋しさがまた溢れ出て、蹴られたように胸が痛んで涙がにじんだ。
そんな頃だった、美夏が聡と結婚すると聞いたのは。