遠吠えクラブ
美夏は、そんな羽純と聡の過去について何も知らない。
たまたま続けて妻を亡くした、不器用でシャイな男だと思っている。
それでいい。ずっとそう思って、幸せに暮らして欲しい。
羽純は、本気でそう思っていた。不思議なくらい、羽純を憎む気持ちにはなれなかった。
それでも羽純は、自分がどうしても手にいれられなかった聡を美夏がやすやすと、しかも自然に手に入れた理由を求めて、時折、迷路に迷い込んだように苦しむことがあった。
その苦しみを羽純ではなく聡に味あわせたくて、ちょっとした悪戯をしてみたこともある。
料理にまるで興味がない聡に失望し始めていた美夏に、夕食ブログを始めるよう勧めたのはほかでもない、羽純だ。
「今は、こういう料理ブログが人気があるみたいよ」
と、ちらちらと家族の幸せそうな写真を散らしているブログのURLを教えてあげた。
ストレートで人を疑わない性格の美夏は、そのアドバイスに素直に従った。美夏のブログには、毎日のように聡の姿がどこかしらに登場した。
たまたま続けて妻を亡くした、不器用でシャイな男だと思っている。
それでいい。ずっとそう思って、幸せに暮らして欲しい。
羽純は、本気でそう思っていた。不思議なくらい、羽純を憎む気持ちにはなれなかった。
それでも羽純は、自分がどうしても手にいれられなかった聡を美夏がやすやすと、しかも自然に手に入れた理由を求めて、時折、迷路に迷い込んだように苦しむことがあった。
その苦しみを羽純ではなく聡に味あわせたくて、ちょっとした悪戯をしてみたこともある。
料理にまるで興味がない聡に失望し始めていた美夏に、夕食ブログを始めるよう勧めたのはほかでもない、羽純だ。
「今は、こういう料理ブログが人気があるみたいよ」
と、ちらちらと家族の幸せそうな写真を散らしているブログのURLを教えてあげた。
ストレートで人を疑わない性格の美夏は、そのアドバイスに素直に従った。美夏のブログには、毎日のように聡の姿がどこかしらに登場した。