天空のエトランゼ〜刃の向き
「雑魚が!」

アルテミアはキャロルの腹に蹴りを入れて引き離した後、一斉に襲いかかってきた魔物に向けて、舞う様にトンファーを振るった。

魔力を使うことなく、魔物達を迎え撃つアルテミアの姿に、ザイルは目を見開いた。

「な、何!?」

次々に倒れていく魔物達。

「ご苦労なことだな!わざわざポイントをくれる相手を寄越すなんてな」

アルテミアは、倒れた魔物達にトドメを刺そうとした。

「させるか!この好機を!」

キャロルは一瞬で体勢を整えると、地面を蹴り間合いを詰めて来た。そして、身を屈め、アルテミアの足を斬ろうと、横凪ぎの斬撃を放った。

しかし、アルテミアは軽くジャンプすると剣を避け、逆に空中で身をよじり、回し蹴りをキャロルの顔に喰らわせた。

吹っ飛ぶキャロルは、呟くように言った。

「強い」

その言葉を聞いた瞬間、ザイルは手を突きだし、光線を放った。

「くっ!」

アルテミアはトンファーで、光線を防ごうとした。

しかし、それを倒れていた魔物達が両腕両足を掴んで阻止した。

「くっ!」

光線がヒットした瞬間、アルテミアは吹っ飛び…ポイントは零になった。

「終わったな」

ザイルは、ニヤリと笑った。

「く、くそ」

背中から地面に倒れたが、何とか立ち上がった時には、アルテミアから僕に変わっていた。

「この時を待っていた」

ザイルは、僕に向けて歩き出した。

「アルテミアにはなれない。今こそ、やつを殺すチャンス!」

「成る程ね」

僕は、彼らの作戦を理解し、頷いた。

「さあ!人間の子供よ!アルテミアとともに死ね!」

ザイルは、手を僕に向けた。

「ザイル!彼は!」

その行動に、驚くキャロルに、ザイルは彼女を見ずにこたえた。

「彼は、天空の女神と融合している!今なら、女神を」

「で、でも」

言い争う2人の隙に、僕は後ろにジャンプした。

「確かに、アルテミアより…僕は弱い!だけど!」

着地と同時に、僕の手に握られた砲台のようなライフルを、魔物達に向けた。

「僕も、勇者だ!」

チェンジ・ザ・ハートの僕専用の武器モード。

バスターモード。

「喰らえ!」

銃口から放たれた炎と雷鳴は、魔物達を一掃した。

「こ、これが!報告にあった力か」

唖然とするザイルに、僕は銃口を向けた。

「終わりだ」

「終わらんよ」

ザイルは、キャロルの腕を掴むと、僕に向けた。

「人間を撃てるかな?」

そして、にやりと笑った。


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