捨て犬な彼 ─甘えんぼクンと俺様クン─
ピンポーン
ん…?
ピンポーン
んー…
「すいませーん!柏葉さーん」
!!!
「あっ、はい!今行きます!」
枕元の時計は10時を指してる。
あのまま寝ちゃったんだ!
隣には無邪気なハルの寝顔。
笑みがこぼれた。
「柏葉さーん?宅配便でーす」
いけないいけない…
あたしは、ハンコを持って駆け出した。
「はい」
窓を開けると、制服を着た、お兄さんが荷物を抱えて立ってた。
でも、あたしが出てから数秒後、にこにこだったお兄さんの顔が固まった。
だんだん笑顔が消え、ついにはそのお兄さんは、口を半開きにしたままになった。
気まずい沈黙…
「あのー…ハンコ…」
あたしが小さく言うと、ハッと我にかえった様子。
あたしがハンコを押すと、荷物を置き、小さくお辞儀をして、そそくさと帰っていった。
「?」
よく分からないけど変な人…
あたしは荷物の送り主の名前に目をやった。
「柏葉…涼子…お母さんだ」
キイッとドアを開けたら、目の前いっぱいにハルの顔。
「わぁっ!」
びっくりしたー
ハルが目を擦りながら手を差し出してきた。
寝癖がぴょんぴょんはねてる。
パーの形に開かれた手。
意味が分からないあたしは、その手の前に、チョキを出した。
諦めたハルが口を開く。
「蘭、俺の首輪かえして…」
首輪…
首輪!?
恐る恐る、あたしの首に手をやった。
付いてる…
さっきのお兄さんの気持ちが分かったあたしは、それからしばらく、昨日のハルを恨んだ。