捨て犬な彼 ─甘えんぼクンと俺様クン─

「いるよ!いらっしゃい!」


ハルを「ハウス」に押し込めて、玄関に向かって叫んだ。


キイッとドアが開き、見慣れた顔が覗いた。


「蘭っ、元気にしてた?」


しばらく見ないうちに、なんだか小さくなった気がする。


「うん。久し振り、お母さん」


あたしが久し振りに会えた余韻に浸っている間に、お母さんがズカズカとあたしの部屋に入っていく。


「あらっ、意外ときれいにしてるのね」


「意外とってなによ」


膨れっ面を作って、いつものあたしを装った。


ハラハラしてる。

バスルームをチラチラと見る度に、寿命が縮んでる気がして…


「あら?」


「ねぇ、蘭、これどうしたのよ?」


お母さんの手には、ハルが脱ぎ捨てた、メンズのスウェットと

昨日買ったハルの服。



一瞬で脳が高速回転した。
< 20 / 31 >

この作品をシェア

pagetop