捨て犬な彼 ─甘えんぼクンと俺様クン─
「いるよ!いらっしゃい!」
ハルを「ハウス」に押し込めて、玄関に向かって叫んだ。
キイッとドアが開き、見慣れた顔が覗いた。
「蘭っ、元気にしてた?」
しばらく見ないうちに、なんだか小さくなった気がする。
「うん。久し振り、お母さん」
あたしが久し振りに会えた余韻に浸っている間に、お母さんがズカズカとあたしの部屋に入っていく。
「あらっ、意外ときれいにしてるのね」
「意外とってなによ」
膨れっ面を作って、いつものあたしを装った。
ハラハラしてる。
バスルームをチラチラと見る度に、寿命が縮んでる気がして…
「あら?」
「ねぇ、蘭、これどうしたのよ?」
お母さんの手には、ハルが脱ぎ捨てた、メンズのスウェットと
昨日買ったハルの服。
一瞬で脳が高速回転した。