捨て犬な彼 ─甘えんぼクンと俺様クン─
「じゃあ…玄関先にいた見知らぬ男の子を、簡単に家に上がらせちゃったってこと?」
お母さんのいつになく真剣な表情に、あたしはうつむいた。
ほぼ同時にハルもうつむく。
「うん…」
小さく答えたあたしに、お母さんは少しだけ厳しめに言った。
「呆れた…駄目よ、蘭。ハル君みたいな人だったから良かったけど、何されるか分かんないのよ?」
ふと隣を見ると、ハルが目に涙を溜めて下唇を噛んでる。
ハルの方があたしの何十倍も反省しちゃってる。
でも、ハルは悪くない。だって…
「でも、ハルはあの日、すごい熱だったんだよ?…外はどしゃ降りだし、ぶるぶる震えてるし、ほうっておけなかった…」
最後の方は声が小さくなっちゃった。
すると、ハルが顔を上げてあたしの方を向いた。
「雨?…熱?…」
ハルが不思議そうに呟いた。
「……ハル、覚えてないの?」