捨て犬な彼 ─甘えんぼクンと俺様クン─

「じゃあ…玄関先にいた見知らぬ男の子を、簡単に家に上がらせちゃったってこと?」


お母さんのいつになく真剣な表情に、あたしはうつむいた。

ほぼ同時にハルもうつむく。


「うん…」


小さく答えたあたしに、お母さんは少しだけ厳しめに言った。


「呆れた…駄目よ、蘭。ハル君みたいな人だったから良かったけど、何されるか分かんないのよ?」


ふと隣を見ると、ハルが目に涙を溜めて下唇を噛んでる。


ハルの方があたしの何十倍も反省しちゃってる。


でも、ハルは悪くない。だって…



「でも、ハルはあの日、すごい熱だったんだよ?…外はどしゃ降りだし、ぶるぶる震えてるし、ほうっておけなかった…」


最後の方は声が小さくなっちゃった。


すると、ハルが顔を上げてあたしの方を向いた。


「雨?…熱?…」


ハルが不思議そうに呟いた。


「……ハル、覚えてないの?」
< 26 / 31 >

この作品をシェア

pagetop