捨て犬な彼 ─甘えんぼクンと俺様クン─
お母さんは、夕方には帰っていった。
お母さんが帰った部屋。
なんか嵐のあとって感じ…
それにしても…
「ハル、分かってもらえて良かったね?」
隣に座るハルに言った。
「ぅん…」
でもハルは、何かがつっかかるみたい。
その"何か"が何なのか、あたしにはすぐに分かった。
「大丈夫だよ、記憶も…いつか戻るよ…」
保証のない言葉。
でもハルは、すぐに答えた。
「おかしいんだ」
そして、あたしの言葉を遮って、ハルが続けた。
「俺さ…昼間の事は覚えてるんだよ。でも、蘭に拾われた日の夜も、昨日の夜も、全然覚えてないんだ」
「俺、夜の記憶がないんだ……昨日も、蘭がお風呂に入った時は覚えてる。でも、目の前が真っ暗になって、いつの間にか蘭が泣いてた…」
そこまで言ったハルは、何かに気付いたようにあたしに聞いた。
「もしかして…蘭が昨日泣いてたのは、俺のせい…?」