つけまデビュー



私は引き出しからカッターを取り出し、勢い良く刃を手首に向けた。

そして刃を手首に滑らせた。







自然と閉じていた目を開くと…。



血なんて少しも出ていなかった。
「え…??」
切った跡がかすかにあっただけだった。

「…っ!!」
私は何度も何度もカッターで手首を斬りつけた。
だけど…。




「なんでっ!?」
ものすごく痛いのに血は少ししか出ていなかった。


包丁で切ればいいと思った。
そうすればちゃんと確実に死ねる…。



だけど包丁は手にしなかった。
死ぬのが怖くなったのだ。
だって、今なよりもっと痛い思いをしなければならないから。
死ぬことはもっと簡単なことだと思っていたのに…。


自分がものすごく恥ずかしくなった。
その惨めな自分にむかついて悔しくなって、自分でもびっくりするくらい泣いた。


何時間泣いただろうか、鏡を見ると目が赤く腫れ上がっていた。

私は『死ぬ』ということをこれから一生しないと決めた。
その代わりあの姉を見返すことを心に決めた。

「絶対見返してやる…。」

そう心に…。



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