ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
答えも待たずに、ユウは出ていった。
マナは不思議そうにユウの消えたドアを見つめている。
「――嫌われたみたいだね」
笑いながらそういうフジオミに、マナは更に腑に落ちない表情をする。
「どうしてユウがフジオミを嫌うの? 会ったばかりなのに」
「彼はもう大人の男だからね。天敵というものは、見ただけでわかるのさ」
フジオミはベッドから出ると、窓へと向かった。
剥出しのガラスの向こうには、荒廃の名残をとどめた風景が広がっている。
「ここは一体どこらへんなんだ? このぐらいの廃墟なら相当大きな都市だったはずだ。ここは、あの海からそんなに離れていないのか?」
「わからないわ。ユウがあたしたちを連れてきたんだもの。あれだと近いのか遠いのかなんて全然わからないのよ」
「彼が連れてきたって、歩いて運んだんじゃないのか?」
「いいえ」
「じゃあ、どうやって?」
「跳んだのよ」
「とんだ?」
「ユウはそう言ってるの。ユウにしかできないわ。思うだけで好きな所に行くのよ」
「まさか、瞬間移動を!?」
「シュンカンイドウ? そういう名前なの?じゃあ、ユウに教えるわ」
無邪気に、マナは言った。
だが、フジオミはマナほど寛容にその事実を受け入れられはしなかった。
超能力は研究としてはだいぶ前の時代にもてはやされたものだが、それも被験者がなくてはならない。
人口が減少をたどる一方となってからは、対象となる人材はほとんどいなかった。
研究は下火となり、それまでの研究結果と仮説だけが残った。
「そうか、シイナの言っていた特殊能力とはそれか…」
考え込むフジオミを、マナはずっと凝視していた。
「ねえ、フジオミ」
「あ、ああ、何だい、マナ?」
「あたし、あなたに聞きたかったの。あなたなら知ってるんじゃないかと思って」
「何をだい?」
戸惑うようなそぶりを、マナは一瞬だけ見せ、けれど思い切って尋ねる。
「博士は、小さなユウを殺そうとしたの?」