ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
真っすぐに、マナはフジオミを見つめた。
彼のどんな微妙な変化も見逃すまいとするかのような真摯な眼差しで。
「――」
だが、フジオミは顔色一つ変えなかった。
だから、内心の動揺は微塵もマナには悟れなかった。
それでも、彼女は再び問う。
「教えて、フジオミ。あたし知りたいの」
「それを知ってどうする?」
フジオミの声は意外なほど穏やかだった。
何の違和感もなくマナから視線を外し、外の風景を見やる。
「それが事実なら、君はシイナを憎むかい? 君に見せている面だけが、彼女じゃない。君の考えているシイナと違ったら、君はもうシイナを好きじゃなくなるのかい?」
「――」
振り返ったフジオミの言葉が、逆にマナに問いを投げかける。
答えを知ってどうするのかと。
だが、どうもできない。
できるはずもない。
時を戻すことも、ユウの心に刻み込まれた傷を消すことも、かといってシイナを裁くことも、何も、マナにはできない。
自分にできることは、ただ事実を知ることだけだ。
マナはシイナが好きだった。
自分を育ててくれたのは彼女だったし、一番歳も近く、何でも話せる女性だった。
今、彼女がユウを殺すというなら、自分は彼女を許せないだろう。
だが、今ユウは生きている。
生きて、マナとここにいる。
それが、マナだけの真実だ。
彼女は顔をあげ、フジオミに告げる。
「もしそれが本当なら、とても哀しいと思う。だって、あたしは二人ともとても大好きだもの」
比べられないほど、今はシイナもユウも大事だった。
「でも、博士はあたしにひどいことなんかしなかったわ。いつも、博士は優しかった。あたしはやっぱり博士を嫌いにはなれない」
毅然と言い切るマナを、フジオミは驚いたように見つめていた。
「――まいったな。僕は君を見縊っていたようだ」
何も考えていない、愚かな子供だと思っていた。
実際、シイナはそう育てていた。
ただ優しく、何も考えないように。
幸せで、今ある自分の立場を疑いもしないように。
だが、自分が初めて会った時と、この子はなんと違うのだろう。
なんて大人になったことか。
「君が、真実を見極める力を持っていて嬉しいよ」
「ありがとう。あたしもフジオミが優しくて嬉しいわ」
「優しい? 僕が? そんなこと言われたのは何年ぶりだろうね。懐かしい響きだよ」
「だって、博士の話してくれるフジオミはいつだって優しかったわ」
「シイナが?」
「ええ」
フジオミは苦笑した。