ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

「マナ、部屋を出るんだ!!」
 座り込んだマナを抱えるように部屋から連れ出すユウ。
 マナは両手で顔を覆って激しく泣いていた。
 追いついたフジオミが見たのは、泣きじゃくるマナを抱きしめるユウと、ベッドに横たわったままの、少し齢を重ねてはいるが、やつれてはいたが、彼の憶えているユカの姿だった。

「生きていたのか!!」

 フジオミもまた、新たに知る事実に、衝撃を隠せなかった。
 ユカは事故で死んだのではなかったのか。
 一体なぜ、こんなところに。
 だが、自分はユカの死を確認したわけではなかった。
 ただ、そうと知らされただけだ。
「どうして、こんなことが…」
 驚きながらも、フジオミはユカに近づいた。
「ユカ、僕を憶えているか。フジオミだ」
 だが、ユカは彼を見はしなかった。定まらない焦点は空を見据えたまま動かない。
 触れようと伸ばした手が、彼女の視界に入るほど近づいても、ユカは無反応だった。
 フジオミの手が彼女の目の前で訝しげに振られても、視点すら重ならなかった。
 その様子は、どう考えても彼の知っているユカとは違っていた。
 彼女は、何の感情も示さない。
「――ユウ、どういうことなんだ。なぜ、ユカがここにいる」
「……俺がシイナに撃たれた時、彼女もそこにいたんだ」
 絞り出すような、苦しげな声だった。
「ユカは片時も俺を傍から離さなかった。だから、シイナも俺を殺す時、ユカを一緒に連れていくしかなかった。
 二人で、谷を見ていた。繋いでいた手が離れたほんの一瞬だった。俺は撃たれて、谷底に落ちていった。多分、ユカは俺を追って谷底に飛び込んだんだ。おじいちゃんたちが見つけた時、ユカは俺をしっかり抱いていたって…」
 フジオミは顔を背けた。
 多分、シイナにとっても計算外のことだったのだろう。
 彼女にとって、ユカはまだ必要だったに違いない。
 だが、ユカはユウを救けに谷底へ飛び込んだ。
 ユカにとって、彼は己れの命にも等しかっただろう。

 あんなにも待ち望んでいた命。未来へ繋がる、命だったからだ。


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