ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「マナ。ユカを責めちゃいけない。ユカは俺を大事にしてくれた。とても、愛してくれてたよ」
「だってわかるの、きっとユウやおじいちゃんに会う前のあたしは、ユカと同じことをしたわ。未来のために、人間が少しでも長く生き続けるために、平気で同じ犠牲を出したんだわ」
「違う、マナ。それは誰のせいでもない。仕方ないことだったんだ」
 ユウは身体を離し、マナを見つめる。
「俺は、初めから全部知ってたんだ。だから、マナをさらった。マナに会いたかったから。初めからマナに言うべきだったんだ。俺が悪いんだ。マナのせいじゃない。だから、マナはもっと俺を責めていい――」
「言わないで」
 目を伏せたまま、マナは首を横に振った。
「もう言わないで。あなたを責めるなんてできないわ。いいのよ。言ったでしょう。何があっても、ユウのこと好きだって」
「――」
「こんなにあなたが愛しいのは、きっとあなたがあたしの子供だからなのね」
 ユウの表情が強ばったのが、マナにははっきりとわかった。
 彼を傷つけたのだ。そして、ユウを傷つけることによって、自分をも傷つけている。
 心が痛い。
 傷ついた部分が、悲鳴をあげてやまない。
 それでも、マナはこの思いを振り切らねばならなかった。
 これは、肉親に対する愛情なのだ。
 それ以上で、あってはならない思い。
 老人の語った言葉が、マナの胸に突きささったまま抜けない刺となって彼女を痛めつける。

母と息子。父と娘。それは一番に惹かれ合ってはならない者同士だ。なぜなら、彼らは最も濃い血を、その身体に等しく宿しているから。近親相姦は古代から現在に至るまで、人類の犯してはならないタブー――最大の禁忌なのだ。

 禁忌を犯して生まれたユウ。
 なんという皮肉だろう。自分達はさらなる禁忌を犯した。
 だが、罪は自分達にだけあるのか。
 ただ愛しただけではないか。
 それを罪だというのなら、自分達を創りだした者こそが最も罪深いのではないか。
「――どうして、あたしたちここにいるのかしら…」
「マナ……」
 いくら考えても答えなどではしないこともわかっていた。
 全てを知ることのできるものはいないのだ。
 それを、今、こんな残酷な形で知らされようとは。
「もう戻るわ。一人にしておいて。今はもう、誰とも会いたくないの」
「わかった――」


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