ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 その日マナが言い出した『お願い』に、シイナは案の定、不可解そうに問うてきた。
「ジープの運転を教わりたい?」
「ええ。博士」
「どうしたっていうの、マナ? 急にそんなことをいいだすなんて」
 シイナの反応は予測済みだった。
 後はいかに自分がうまく隠せるかだった。
「だって、博士。ここでは何もすることがないんだもの。あたし、退屈で死にそうなのよ。身体を動かしたいのよ。外に出れないのなら、変わったことがしてみたいの。大丈夫よ。倉庫からは出ないから。
 あたし考えたの。気分を変えなきゃって。そうすれば、ユウのこと忘れて、フジオミのこと考えられるかもしれないわ。だって、あれはもう過ぎたことだもの。ユウは死んだんだもの。そうでしょ、博士?」

 無邪気で愚かな少女の振りをする。

 それが、シイナを騙す唯一の手段だ。
 フジオミと違って、シイナはマナの変容を知らない。
 もとより、彼女の固定観念からは、マナは以前どおりの何も知らない人形のような少女を脱しない。
 彼女の日々のマナに対する接し方で、それはもう明らかだった。
「気分転換をしたいのね」
「そう。だって、もうディスクだけの学習なんて飽きちゃったわ。もっと面白いことがしたいの」
「――わかったわ。その代わり、危険なことはしないこと。約束できる?」
「ええ、できるわ。ありがとう、博士」
 マナは、シイナに抱きついた。
 あくまで以前の自分と同じように振る舞った。
 それはマナ自身にとっては気持ちのいいものではなかったが。


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