ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
足元をかろうじて照らす水銀灯をたよりに、フジオミは暗闇の中を壁伝いに歩いていた。
先程の警報でシイナも居住区にいるはずのマナの安否を確認する。
そうすれば、マナがいないことに気づくはずだ。
確かもう少し行けば、次の角に水銀灯が見えるはずなのだ。
そして、その下のボックスには非常事態用の工具がある。
ライトもあるはずだ。
ドームの電気系統の配電盤の、さほど重要でない配線を切ったのはフジオミだった。
緊急時には非常用の電源は全てドームの機能を維持するために使われる。
居住区は特に後回しにされるのだ。
シイナが直接居住区に確認にいくはずだ。
それで、少しは時間が稼げる。
シイナがマナの不在に気づくその前にマナを見つけださなければならない。
きっと彼女は管理区域の倉庫に向かっているだろう。
ここ一週間、車の運転を教わっていると聞いていた。
ならば、それで逃げようとするに違いない。
急いでいたフジオミが、突然動きを止めた。
暗闇の中に、人の気配を感じるのだ。
「誰だ――?」
答える声はない。
「…ユウ、君か?」
とっさにそう口にしていた。
答えはない。
ただ動かずにじっと、そこにいる。
だから、フジオミは確信した。
「マナは部屋にはいない。管理区域に行ったんだ。自分一人でここを出ていこうとして」
答えがなくても、フジオミは構わず話しかける。
「僕を連れていってくれ。君がマナを愛しているように、僕はシイナを愛している。僕が彼女を止める。だから、彼女を」
傷つけないでくれ。
最後まで言う必要はなかった。
無言のまま、影が動いた。