ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

「――」
 しばしの間をおいて、ユウは声をあげて笑った。
 その表情は歳相応にあどけなく、マナの恐怖心を残らず拭い去るには十分だった。
「ひ、ひどいわ。あたし、本気でそう思ったのに」
「じゃあ、マナの瞳は茶色いけど、みんな茶色に見えるのか?」
「ち、違うけど、でも、本当に、綺麗な赤だから――」
「綺麗?」
 ユウは訝しげな表情でマナを見つめた。
 なぜそんなことを言うのかわからないといった表情だった。
「綺麗よ。濁ってない、本当に綺麗な赤。あたしも、こんな綺麗な色だったらよかったのに」
 マナは顔を近づけて、じっとユウの瞳を覗き込んだ。
「ずっと昔には、もっとたくさんの人がいて、ここだけじゃない、海の向こうの別の大陸で生活していたんですって。その人達は、あたしとは違う種で、髪の色も瞳の色も違うの。金の髪や銀の髪、瞳の色は青や緑。あなたみたいな赤い瞳をしていた人も、きっといたのね」
「マナは変わってる」
「変わってる?」
「誰も俺の髪や瞳のことは話さなかった」
「どうして?」
「俺がこの髪と瞳を嫌いだからさ」
「こんなに綺麗なのに?」
「そう面と向かって言ったのはマナだけだ。だからマナは変わってるのさ」
「綺麗なものは大好きよ。だから、ユウの髪も瞳も好きだわ」
 膝の上に頭を預けて、マナはユウへ視線を向けた。
「どうしてかしら。さっきまで、あなたがとても恐かったの。でも、今は違う。何だか、初めて会った気がしないの。懐かしいような気が、するの。変ね。本当に、初めて会ったばかりなのに…」
 話し疲れたのか、いつのまにかマナは微睡み始めていた。
 睡魔にまけて、目蓋が閉じられた。
「マナ?」
 ユウはそっと名前を呼んだ。
 だが、返事はない。ユウはマナの顔を覗き込んだ。
 まだ幼い少女の寝顔に、ユウは苦痛に耐えるかのような表情を向けていた。
「――」
 そうして、朝が来るまであどけない寝顔を見つめていた。


< 24 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop