ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 マナを呼んだのは、二十代後半の美しい女性だ。
 マナの育ての親とも言える。
 色素の薄い髪は襟足にとどくほどで切られて、少々男性的な感を与えている。年齢よりは若く見えるその面差しは、些か感情に乏しく、冷ややかな美貌を際立たせていた。
 対照的に、マナは腰までとどく黒髪を揺らして、少女らしいあどけない笑顔で、シイナのもとへとかけよる。大きな瞳が印象的に映るあどけない顔立ちは、無邪気さもそのまま表わしていた。
 自分より大きなシイナを見上げるマナは、時には冷酷とさえ見えるその美貌が、自分に向けられるときは暖かく慈愛の深いものになるのを知っていた。透き通るような、感情に乏しい声も優しく響く。
 マナは母親に対する愛情を知らないが、劣らぬ想いでシイナを愛していた。この閉ざされた世界に存在する数少ない人間の中で、唯一彼女だけが同性であったことも、その理由と言えよう。
「博士、今日は何か起こりそうな気がするの。とても、不思議なこと」
「まあ。マナには隠し事はできないわ。何でもお見通しなのね」
「どうしたの、博士。何かあったの?」
 好奇心を隠さずに、マナはシイナの腕に絡みついた。
「そうね。〈学習〉が終わったら教えてあげるわ」
「何なの、博士。隠さないで教えて」
「それは見てのお楽しみよ。さあ。行きましょう」
 二人は部屋を出て、大きく緩やかな弧を描く長い廊下を歩いた。
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