ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 この科学技術の粋を懲らして造られた建造物――ソーラーパネルで外面を覆った半球のドーム――が、マナの世界の全てだった。
 地下十階の更に奥の最下層に動力維持のための設備を据え、底部の中心点からは頂点へとエレベーター八台を据えている。
 内部は、一階をホールと倉庫にして、二階から十階までをケーキを配分するように均等に四区域に分けており、管理、研究、居住、生産と、それぞれの機能別に各技術者によって統制されている。各区域は偶数階ごとに全ての区域と通じるようになってはいるが、それぞれの職種に応じて立入が厳しく規制されている。
 今、マナとシイナがいるのは研究区域である。シイナはこの区域の責任者でもあった。
 マナはこのドームの構造を知識として理解していたが、実際に彼女が知っているのは、研究と居住区域のごく一部分だけだった。
 だが、マナにはそれが苦にはならない。それは知る必要のないことだからだ。

 マナは選ばれた人間なのだ。

 だから、それ以外は何も重要なことではない。そう、教えられてきた。
 今も彼女は、何も知らずにシイナに連れられて、居住区の自分の部屋から平行に移動し、研究区二階の学習部屋へと移動している。
 研究区の三階から五階分までは存在しない。その空間は、床をぶちぬいて造った植物用の大きな温室となっており、エレベーターへ向かう直線の廊下側面は特殊コーティングを施したガラスが張り巡らされていた。
 マナとシイナが向かうその先で、長身の青年が、ガラスの向こうの実験用植物の温室を眺めている。
 初めに彼に気づいたのは、マナだった。
 続いて、シイナも気づき、二人は立ち止まった。
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