ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「シイナに、会っているかね」
カタオカは独り言のように呟いた。
背を預けた皮張りのソファーが、ぎしりと音をたてる。
「ええ。マナの居所がつかめないので少々焦っているようです」
カタオカと向かい合って座るフジオミは、グラスを口へ運んだ。
「マナ――か。いくつだったろうか、その子は」
「十四です。もう五年もすれば、ユカのように美しい娘になるでしょう」
「ユカ――そうか、彼女が死んで、もう十四年も経ったのか……」
ユカは、カタオカの伴侶であった女が産んだ子供だった。
もちろん彼の子供ではない。
子供の産まれにくいこの社会では、いつしか一妻多夫制を取り入れていた。
身体の弱かった〈妻〉は、二人目の子を産むとすぐに亡くなった。
それがツシマとサカキの血を引くマサトとユカの兄妹だ。
カタオカ自身は、自分の子供をとうとうその腕に抱くことはなかった。
ユカは何度も身篭ったが、そのほとんどは流産であった。
生殖能力があり、妊娠することができるのに、なぜか育たない子供達。
その度に衰えていく彼女の身体。
カタオカはユカに数えるほどしか会っていなかった。彼女自身に、興味すらなかった。
妊娠、出産は、多大な疲労を、肉体とその精神にかける。
子供を産むためだけの道具のように扱われる彼女。
そのためにユカは複数の〈夫〉を持っていた。
それでも、彼女はそれを不満に思うことさえないようだった。
未来のために。
誰もが口をそろえて言う。
その内の一人に、かつては自分も入っていた。
若かった自分は未来を考えながら、その実何も理解してはいなかったのだと苦々しく思い知る。