ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

「大地には浄化作用がある。形あるものを分解し、己れに取り込み、一部として、もう一度新たなものに産み出す。全ての命を再生する、そんなことができるのも大地だけだ。人間は、それを忘れてはいけなかった」
 老人は、その時初めて、マナを振り返った。
 そして深い感慨をこめた眼差しで彼女を見つめた。
「マナ。全てのことには、意味があるのだ。それが何なのかを探すのが、人間の生きるということだ。この世界で意味のないものは何もない。全ての生命に、意味があるのだよ。そう、死ぬまで、いや、死んでも――」
「死んだら、それで終わりでしょう?」
 不思議そうに、マナが首を傾げる。
「ある意味では、それが正しい。だが、昔、人は死んでも魂は残るのだという思想があったんだよ」
「ユウに前に聞いたわ。あの西の山は、魂が行く場所だって。レイジョウっていうんでしょう? 魂って、あたしたちの意識なんでしょう」
「ああ。魂とは、人間の核とも言えるものだ。そう、例えるなら、我々は肉体という入れ物の中に閉じこめられた意識であるということだ。だから、肉体が生きている間は、それが自分だと錯覚する。だが、肉体が死ねば、魂は解き放たれる。痛みもなく、哀しみもなく、苦しみもない彼方へ」
「かなたって? 魂は、何処にいくの?」
「さあ、それは何処か私にもわからない。まだ死んだことはないからなあ」
「死んだことないのに、どうして魂がどこかにいくなんてわかるの?」
「信じているんだよ。死で全てが終わるなんて、あんまりいい考えとは思えないからね。そういえば、古い宗教には生まれ変わりの思想もあったそうだが――」
「おじいちゃん、宗教って何?」
「私にも、よくはわからんがね、ある特定の、神、または特別な人間の思想を信じることだそうだ。いわゆる、人の心の支えとなったものか」
「神って言うのは?」
「人間ではないもの、我々を、いや、我々だけでなく、この世界全てを創ったもののことをそう呼ぶのだ」
 マナは眉根を寄せた。
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