誘拐犯は…神様だったのです!
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ある日の深夜
月が残り数日で満月になりそうな夜
静まり返った住宅街に冷い風がなびき、それに黒紫色の髪の毛を揺らす男が月をバックに民家の屋根の上に腰をおろしていた
「もうすぐ…満月か」
囁かれた言葉は、風の音に消え、いつのまにかそばにたたずむもう一人の男性が彼の少し後ろに立ち口を開く
「はい、もうじき…契約の日です」
「あぁ」
「…本当に、よろしいのですか?」
「…………」
「私は、やはり強引に奪うと言うのは賛成出来ません」
そう言う彼に、もう一人の男性はチラリと彼を見てすぐに視線を戻してしまう
「仕方がない、どんな理由があろうとも…あれは我らにとっても大切な物なんだ」
「はい、それは存じています。…ですが、交渉をすると言うのは意にそいませんか?」
「………」
その問いに答えない彼に、軽くため息をはく
その無言が意味する言葉を彼はわかっていた
「分かりました…紫音様の意思に従います」
頭をさげ、彼は数歩後ろに下がる
「……………」
そして、再び…二人に冷たい風が吹き抜けた―…
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