誘拐犯は…神様だったのです!





ゾッとするような触り方。

それは薄暗い部屋に僅かな月の光が私にそう感じさせて…


「………っ」


息を飲みながら彼を見上げていると、紫音さんはクスリと笑う



「凜……そんなに怯えて…私が、怖いのか?」


「……っ」

「いきなり押し倒されて、殺意で満ちてる私が怖いか?」


「…し…おん…さんっ」


「怖がればいいさ。そして、私を嫌いになればいい」


「…………っ」


紫音さんを…嫌いに?

「そ…そんなのっ」


「なれないのか?最初の頃は嫌いだったじゃないか」


それは…だ、だって…いきなり誘拐まがいのことをするし、勝手にキスもするし、花嫁になんかされてしまうし


嫌いだったのは、間違いない。でも、それは最初だけで紫音さんの優しさにふれ、彼を知っていくうちに、そんな気持ちはいつの間にかなくなっていた


「私は…少し油断をしていたんだ」


「………え?」


「キミは人間だから、ただ利用するだけで良かったはずなのに…キミの心に惹かれてしまった」


「………っ」

「キミを自分の物にしたいと言う願望が生まれ、同じくして…キミを"好きかもしれない"と思った」


「……紫音さん」


「だから、あの日の夜に…君を半ば無理矢理抱いた。好きだなんて言う気はなかったのに、つい出てしまった」


「…………」


首筋にあった手を離し、そのまま床につきヒラッと彼の綺麗な髪の毛が私にかかる



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