誘拐犯は…神様だったのです!



「えっと、せっかく来てくれて悪いんですけど…私は行きますね。海鈴さんには二人のことは言いませんから」


「…凜様…」


「だから、ごめんなさい。失礼します」


頭をさげ、良心が痛みながらも部屋を出て行こうとすると



ガシッ――…


「!?」


力強く腕を掴まれ、振り向くとずっと黙っていたフウさんが私を見下ろしてる


「…あ」

「どうして逃げようとする」


「………っ」

「気にはならないのですか?紫音様のこと」


「…それは…」


「私達は、凜様を迎えに来た」


「……え」

「もう一度、紫音様と向き合ってもらうために」

「……」

「だから、戻りましょう…」


「………」


戻る?空界に?また、紫音さんと向き合うために?



だから、トールさんとフウさんが迎えに来たの?


「………っ」


そう…やっぱり、この二人なんだ。向き合うためにってことは


そこに紫音さんの意識はない。それで、私が戻っても…紫音さんは私を拒否して、また…傷付くだけだよ…だから



「ごめんなさい…フウさん、トールさん…」



フウさんの手を握り、そっと引き離し私は二人を交互にみる


「私は…もう戻れません」


「「………」」


「逃げようと、誤魔化そうとして申し訳ありません」


「「………」」


「…私は…その…人間界に戻ることにしたんです」



私の言葉に、フウさんは表情を変えなく逆にトールさんは目を大きく開く


「…は?凜様…何を言って…」


「ずっと…深界に来て、ずっと考えていたことなんです」



言おう。私の思いを。迎えに来てくれた二人に、私のお世話を沢山してくれた二人には言わなくちゃいけない


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