誘拐犯は…神様だったのです!





「わたし…楽になりたい。自分勝手です。わかってます。それでも、追いかけるだけは苦しい」


「………」


「フウさん、女の子は皆…たった一人を愛して愛されたいんです。辛いことがあったりしたら、何も言わずに抱き締めて欲しい…」


「…………」


「我が儘ですけど、そうゆう生き物なんです」


「………」

「……………」


「そして、紫音さんは…少なくとも…私を抱き締めてはくれません」


「………」


「だから、全部を夢にして、帰ります。好きだった紫音さんを恨みたくないから、ただの長い夢にしたいんです」



「……」


「ごめんなさい、トールさん、フウさん」



もう一回、もう一回だけ頭を下げればフウさんはチッと舌打ちをすると


乱暴に窓をあける



「え、オーディンどこに」


「帰る」


「は?帰るって、お前!」


「ここに、私の主はいない」


「…………あ」


チラリと私をみつめ、フウさんはそのまま窓から飛び降りて行ってしまった



フウさん…ごめんなさい。せっかく、私を認めてくれたのに…本当にごめんなさい



「全くアイツ…あれじゃバレるだろうに!あ…と、とにかく凜様」


「……はい…」


「俺はアイツを連れ戻すから、人間界に戻るなんて考え直すんだ。いいか?確かに紫音様は無表情の無愛想、しかも誰にも頼らない、なに考えるかわかねぇし、気分屋だけどな…それ以上に…いい所を知ってるだろう?」


「…………」


「俺だって、初めてあった時よりはお前が好きなんだよ。だから、俺たちの主はお前じゃないとだめなんだ!いいか?お前、俺たちが帰ってくるまで考えなおせ」


「……トールさん」


「絶対だからな!絶対だぞ!絶対」



そう叫ぶと、トールさんもフウさんをおうように窓から飛び降りていく



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