誘拐犯は…神様だったのです!




「…うっ」


「関係、ない?」



「そうです!関係ないっ…っ」



ズズッと思いきり、息を吸い込み涙を乱暴にふくと、突然肩に手をおき身体を離され向かい合うと



「…………っ」


いつもとは違う。無表情の怒りじゃない。明らかに表情がひきつり


その顔からは、怒りを感じる


「なら、人間界に戻ったら一人で…たった一人でやるつもりなのか?」


やる、つもり?

それって………生活のこと?今まで身の回りはやってくれたから出来るかって聞きたいわけ…?



「…そんなの…当たり前じゃないですか…っ」


「………」


「私は、私は今まで…そうやって生きてきましたっ…おばあちゃんが亡くなってから…お母様にも頼れなく…どんなに寂しいときも…たった一人で…だから、一人でもやっていけます…っ…紫音さんに、紫音さんなんか、心配されたくない!」



されたくないよ。私を…拒否した紫音さんに心配なんか…されたくない



そんなの、胸が痛い…



無意識だろうか、また…ぬぐった瞳から涙が零れそのせいで、目の前にいる紫音さんの姿が歪む


あぁ…駄目だ…拭いても、拭いても止まらない


紫音さんが、私の目の前にいて触れている限り


涙なんか、止まらないよ…



もう、何を話せばいいかわからない…


わからないよ、わからない


ぐっと唇を噛みしめ、みっともなく流れ落ちる涙を拭こうとすると―…




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