誘拐犯は…神様だったのです!



「…な!」


"降ろして!"なんて言う暇もなく、彼は素早く立ち上がり歩き出してしまう


ちょっと、待ってよ!


どうしていい歳にもなって、おんぶをされなくちゃいけないの?


しかも、男の人に。つい何日か前に知り合った人に!


お、降りなくちゃ…


「あ、あの…っ…私は大丈夫ですから…降ろして下さい」


肩に手を置き、背後からそう言うと無言のまま歩いている


「あの…?」

「…」

「…き、聞いてます?」
「………」

「わたし…歩けますから」

「………」

「……………」


か、完璧…無視ですか。降ろす気はないってこと?


無言になるなんて、狡い…


暴れて無理矢理降りようか…そんなことを思うけど、ガッチリ脚を押さえられていて無理だ


「……はぁっ」


諦めよう…反抗してまた睨まれるのは嫌だし、精神的にどうかなっちゃうし


ため息をはき、手の力を抜いてそのまま彼に身体を預ける






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