コスモポリタン
ムカついたから横目でしばらくにらみ返していたのだけど、こちらに気づく様子もなくて本当に憎たらしいわ。


でもいったい何のつもり?

受け取ったプリントをぱらぱらマンガでも見るくらい早いスピードでめくり眺めている。

とても読んでいるスピードには思えなくて、観察を止められない。

至って無表情な黒い瞳は手元の紙だけを凝視していてふざけた様子は全くしない不可解ぶりだし。


「みなさんの手元に資料が行き届きましたね?」

純一教授の言葉が遠く聞こえた。


最後のページまで行き着いた陸天野は机にプリントを戻し、向かいの席に並ぶ教授陣を観察するように見始めた。


「ルーキャスタ、集中してください。」


机の下で腕をつつかれ我に返ると、小声でロベルトが言った。


「あ、ええ、そうね。」


恥ずかしさを隠すようにあわててプリントに視線を落とす。


途中、一年間私たちが校舎として使う宇宙船の見取り図なども含まれていたものの、基本的に文字の多い資料。

やはり陸天野のさっきのスピードで読める代物じゃないわ。
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