恋と上司の甘い相関関係
印刷された献立表を見るともなく眺めながら、昔を思い出しているような遠い目をする拓海さん。


初めて彼の脆い部分を覗いた気がする──…


そう思いながら、あたしは黙って彼を見つめていた。



「そんな落ち込んでる時に博子チャンが言ったんだ。

『辛いなら辞めなさい。でも私はいつでもあなたの味方だから、それだけは覚えておいて』って。

専務としてじゃなく、母親としてそう言ってくれた」



拓海さんは、神妙な面持ちのあたしを見てふっと笑いかける。



「そう言われたら、なんか逆に辞めたくなくなったんだよな。
一人でも俺のこと理解してくれる人がいればいいか、って思えてきて」


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