恋と上司の甘い相関関係
そこまで聞いて、俺はドアに向かって再び踵を返した。



「待って!拓海…っ!!」


咄嗟に結城が俺の腕を掴んで引き止める。



「あの二人の所へ行くの?邪魔しちゃ可哀想よ!」



結城は目で、全身で、懸命に“行かないで”と訴えている。


俺は苛立ちで歪んだ顔を露にしながら、彼女の手をグッと掴んだ。



「俺だって、みすみす好きな女を他の男に譲りたくはないんだよ」


「──!!」


「俺はそこまで心の広い人間じゃない」



その言葉に目を見開き、絶句する結城の手からはふっと力が抜けた。


俺がゆっくり手を離すと、それは力なくだらんと垂れ下がる。


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