恋と上司の甘い相関関係
言い終えた時、“無”の瞳から生まれたものは一粒の涙だった。


結城さんは最後の禁断の手段を使って、
拓海さんを永遠に縛り付けようとしたんだ──…



「…最低でしょう?
最低で、愚かで…馬鹿な女だわ」



自嘲するように笑いながらも、その瞳からはポロポロと涙が零れている。


結城さんの気持ちは痛いほど伝わってきて、あたしの胸も酷く苦しくなった。



「意識が戻ったらすぐ拓海に怒られたわ。あんなに怒った彼を見たの初めてよ…。

怒って、何度も謝ってた。
拓海は何も悪くないのに…、謝らせたいわけでもなかったのに…」



嗚咽を洩らして泣きじゃくりながら、結城さんはずっと我慢していた想いを吐き出しているようだった。


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