僕は君を抱きしめることができない
葬式がおわるとすぐに遺産がどうだとか





だれが相続するんだ、とか……。





その話が終わった後はボクのことだった。





誰が引き取って育てるんだとか、





その間中、ボクは薄暗い部屋の中に隠れていた。





あの頃のボクはただ怖くて、





頭では解ってるのに母さんが死んだって実感がなくて、一度も泣けなかった。





数時間すると、部屋に綺麗な女性が入ってきてボクの頬に優しく手を触れてこう言った。





「今日から、貴女は私の子供です。」





「は……い……」





見とれてしまって、ボクはそれだけしか返事ができなかった。






女性はそれから優しく微笑み





「もう、一人になんてしないから。私が守ってあげる」





そう言って、ボクを抱き締めた。





抱き締められていると、女性の体温が伝わってきてまるで母さんに抱き締められているみたいだった。





ポロポロと涙が落ちていく





ボクはその時、ようやく泣けた。





母さんが死んだことはまだ受け入れられなかったけど、勝手に涙が落ちてきて声をあげて泣いた。




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