僕は君を抱きしめることができない
「この人は一体だれなんですか?」






「そこまではわからないんだ。本人は口をつぐんだままだし、この子の居場所もわからない」






そういって、写真を指差す。






「その写真、美月くんが撮ったんだって」






兄さんが……






写真を――――?






「兄さんは写真を撮るのも撮られるのもすごく嫌ってました」






なのに写真を撮った。






それは、それほどこの娘を記録に残したかったってこと?






この娘はそれほど兄さんと深い関わりがあって…大事にされている子ってこと?






「まっ、とりあえず教室に行こうか咲月ちゃん。もう授業も始まっていることだしさ!」






純さんにそう言われて壁にかけてある時計を見る。






時計が指している時刻はとっくに予定時刻をすぎていた。






「大変っ!10分もチコクしちゃった!」






ボクが慌てて理事長室を出ていこうとすると純さんは言った。






「咲月ちゃん、放課後またおいで。多少のことなら教えてあげられると思うから」






ヒラヒラと手をふる純さんに「ありがとうございました」とお礼を言い、理事長室を飛び出す。






なにやってんだろ、ボク!






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