ヨカナーンの首
私は毎日、4階へ通い続けた。


彼を汚さないように柵へ背を向けて、

生徒会室から聞こえる声に耳を傾ける。


私のもっとも幸せな時間だった。



そんな、ある昼。


「なあ、与加那。

猿目ってさぁ、お前に気があるんじゃね?」



心臓が跳ね上がった。

与加那は彼の名。

猿目は私の名だ。



私の名を聞いたら、彼の耳は腐り落ちてしまうのではないか。


それが心配だった。


私は息をとめた。

存在を消そうと、必死に気配を殺す。


それが、彼を守るために取れる、唯一の手段だった。



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