ヨカナーンの首
ある日。

私は校舎裏で彼の首を切り落とした。


あの4階に忘れられていたチェーンソーが、今になって牙をむくなんて、彼は想像すらしていなかったに違いない。

皆、覚えていやしないのだ。

置きっ放しにした工具も、ささやいた陰口も。


足元の草の緑色の上に、鮮やかな赤がこぼれる。

彼は血の色まで美しかった。



汚れるのは生きているから。

生きていなければ、汚れることもない。

彼の生き様も、高潔さも、汚さなくて済む。


ほらこうすれば、私は何の気がねもせず、彼を見つめることができる。



< 14 / 16 >

この作品をシェア

pagetop