La'cryma
「ユーリ。」


ユーリ「お父様!」


ミレイヤ侯「今日はセリンにとって大切な日となる。粗相の無いようにな。」


ユーリ「…はい。」


今日はセリン様の婚約者候補が来る


ユーリ「つまんないな…」


セリン「ユーリ!」


ユーリ「セリン様!…すごい、きれい…」


セリン「ありがとっ!今日はよろしくね。歌、期待してるからね。」


ユーリ「はい!頑張ります!」


社交会はいつも通り始まった。

お父様とセリン様の後ろを歩き、数え切れない人に挨拶をして。


ダンスの前に歌われる「歌」


それが私の今日の役目


私が今日歌うのは一番好きな「慈愛の歌」


何百年も前の光の巫女様が作った歌と言われてる


ミレイヤ侯「ユーリ!では、頼むぞ!」


ユーリ「はい。」


流れ出す音楽。


私の記憶がはっきりしているのはその時まで…


ユーリ「えっ…いやっ…何これっ…誰?いやっ…痛い…痛いよ…いやー!…」


ミレイヤ侯「音楽を止めろっ!!」


私は胸を押さえたまま倒れた。

ミリーが好きと言ってくれた歌も歌えず。


ミレイヤ侯「いったい何なんだ!何があったんだ!」


「ミレイヤ様。お嬢様の体に何か傷跡はございましたか?幼い頃に怪我をしたとか…」


ミレイヤ侯「そんなものないはずだが…」


「おそらく…聖痕でございます。」


ミレイヤ侯「…聖痕だと…。」


「はい。私には報告の義務がありますので。」


その時を境に私の人生は当たり前の歯車から逸脱した。


ミリーのお菓子も…。


苦手な社交会も…。


当たり前の幸せすら手に入れることは出来なくなった。
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