GOONY
さすがに二人じゃ気まずいので、
犬の散歩と言い訳をしつつ
家の前の海岸線、防波堤の上を歩く。

車が通らない。
船ももう帰港済み。
時折波の音が聞こえる。
海風に煽られちょっと肌寒い。

「来月、蒼にぃかえってくるらしいよ」
「へぇ。なんで?」
「さぁ?蒼にぃのおばさんとおかあさんが話してたの聞いてだけだから」
「ふーん。こっちに戻るのかな?あの人結構有名な会社入ったんじゃなかったけ?」
「うん」

蒼にぃ事、蒼ニさんは3年前ここを出た一人だ。
そしてなぎさの初恋の人…。

手を組んで歩いている所を見たことがあったが、
そのあとすぐにここを出てしまった。
なぎさは蒼にぃの事をあんまり話したがらない。

「あのさ。洋は次いつ帰ってくるの?」
「さぁな。船代も高いし金貯まるまではかえってこれねーだろうな。」
「そっか。みんな出てっちゃうね。」
「でも蒼兄かえってくるんだからいいじゃん。お前付き合ってたんだろ?」
あ…。しまった。つい口に出してしまった。
なぎさはちょっと間を置いてこちらを振り言った。

「お嫁さん連れてくるんだって。」
「え。あ。そうなんだ。よかったじゃん…」確実に目が泳いでいた。

「あのさ!向こうついたら母さんが色々物送れって言われてんだ。お前もなんか欲しいものあるか?」
ちょっと泣きそななぎさをみて、急いで話を変えた。

「え?欲しいもの…?」
「常識の範囲無いにしろよ!後高いもんは駄目!」
急に話を変えたのは正解だったようだ、肩透かしを食らったのかなぎさの顔が緩む。

「あははは!なんにもいらないよ。私に必要な物はここにある。それに洋じゃ無理無理!そんなお金があったら帰ってきなさいよ!」
「ヒデーなw仮にも女だろ!ジュエリーとか洋服ぐらい言ったらどうだ可愛くねーなー」
「ジュエリー!もう都会カブレしてる!あははは!」

顔を真赤にして笑う彼女と、あとは他愛もない話をしながら家まで帰った。

「…じゃあね。」家の前につくとポツリと彼女がつぶやいた。
「金が溜まったら帰ってくるから…。」また下を向く彼女に掛けられる言葉は少なかった。


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