GOONY
一瞬で目が覚めた。

荒廃したビル、煤けた匂いとドロっとした感覚、そして、なぎさの言葉。
あまりにリアルな感覚に襲われ、鼓動が早く冷や汗をかいているのがわかった。
あたりを見回すとまばらに寝ている寝息だけが聞こえてくる。

平穏だ…。とても…。

静かに立ち上がり壁沿いに扉へ向かった。
波も静かで船のあかりと夜空以外なにも見えない。
甲板の椅子に座ると、さっきの夢を思い返した。

嫌な夢だ。
これから町にいくのに…。

しかも夢に渚が出てくるなんて初めてだ。
願っても出てきたことなんか無いのに…。

頭を抱えながら、大きくため息を付くと海風が頬を舐めていくのがわかった。
しけった匂い、これから雨になるだろう。
手を組みながらぼーっと海を眺めた。
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