こちらミクモ探偵事務所3
終業式の翌日、紘哉は制服を着て電車に乗っていた。
別に学校へ行くわけではない。
その証拠として、彼の手にはボストンバックが握られていた。
『――行ってらっしゃい。芳樹(よしき)さんによろしくね』
今朝そう言って紘哉を送り出した母は、どこか心配そうな顔をしていた。
無理もない。
なぜか紘哉だけで来てくれと言われたのだから。
「……」
彼は口をへの字に曲げ、お気に入りの文庫本を開いた。