悪魔の花嫁
「ただいま」

葉弥がそう言って帰った場所は養護施設だった。

小さい子から葉弥くらいの年代の子まで様々にいる。

「「葉弥ねーちゃんお帰りーーー!!」」

子供達が一斉に葉弥に飛びつく。

葉弥は先程は違い、ニコッと笑みを見せると子供達を抱きしめる。

「重いなぁ・・。皆、ちょっと太ったんじゃない?」

「「ひどーーーい!!!」」

葉弥はそう言って子供達と手を繋ぎ、笑いながら寮の中に入って行く。

楽しそうに笑う葉弥を愛士は複雑な顔をして見つめた。

葉弥は綺麗だ。

彼女は自分の事より、相手の事ばかりを考えている。

子供達や寮の先生の事ばかりを優先して、皆の話を聞いて、自分の「イジメ」の事は言わない。

きっと誰にも負担をかけたくないんだ。

今日、一日眺めていてそう思った。

葉弥が眠りに着いた事を確認すると、愛士はゆっくり瞳を閉じ、一瞬で葉弥の部屋へ移動した。

スゥっと規則正しい寝息を立て寝ている。

綺麗な寝顔を見つめ、その額に、人差し指と中指を置く、すると、愛士の周りは葉弥の部屋ではなく、病院の中に変わった。

自分も現世にいた頃はここで生活していた。

たくさんの人達がそれぞれの病気と闘っている。

そして、ここには23歳くらいの葉弥がいた。看護婦として・・。

車椅子を押し、患者さんと楽しそうに話している。

そう、これは葉弥の夢だ。

彼女は看護婦になる事が夢なのか・・・。

愛士は夢の中で懸命に働く葉弥を見つめた。

すると、葉弥が愛士に気がつき、近寄ってくる。

自分では気が付かないうちに凝視してたのかっと慌てる愛士に、

「どうしたの?」

っと葉弥が優しく微笑む。

「え・・・や・・いや。知り合いの見舞いで、あなたが、知り合いに似てたから・・・。」

「そうなの。」

優しい声でそう言って愛士の頭を撫でた。

愛士の顔が赤くなる。

「あ、ごめんなさいね、高校生でしょ、頭、撫でられるなんて嫌よね・・・つい・・あなたがとても・・・」

葉弥は言いにくそうに少しだけ間を置いた。

「辛そうな顔をしていたから・・」

その言葉に愛士は目を見開いた。


































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