彼はスター


無視してもメールはきた。
私はそのうち読むこともしなくなった。


心が壊れていきそうなのを感じていた。
行きたくないけど、自分ではどうにもならない。


どんどん落ちていく。

トキちゃんだけ、私を引っ張っててくれる。
トキちゃんがいなかったら、もっとわけわかんなくなっていたはず。


毎朝迎えに来てくれる。仕事がない日は映画館に連れて行ってくれたりする。

始めはイヤだった。無理やり起こされて、大した用もないのに事務所に連れて行かれたり。



でも今はトキちゃんに救われている。


その日の帰り別れ際に言った。

「もう大丈夫だよ。」

トキちゃんは意外そうな、驚いた表情になった。

そしてあたしの心を透視しているかのような目つきで見つめ、
納得して頷いた。

「では翔さんと連絡取って下さい。」

思いもよらないトキちゃんの言葉に耳を疑った。

「私、知ってるんですよ。メール返信してないの。」


トキちゃんは私を責めてるみたいな目つき。

「な、な、なんでわかるの?」


「なんでもわかります。」

トキちゃんにキッパリ言われた。
やっぱりわかるんだ。

「今すぐ連絡して下さい。」

トキちゃんはすごい勢いで、私の携帯を鞄から勝手に出した。
 

私は慌ててトキちゃんから携帯を奪い返した。

「連絡する!連絡するから。家着いたらでいいでしょ。」


慌ててメールはしたくない。トキちゃんもわかってくれて反論しなかった。



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