彼はスター


マンションの前にタクシーが止まる。家に入って、携帯を手にした。

受信メールを開く。
翔君からのメール、見てなかったからちゃんと読んだ。


この1ヶ月、3日に1度メールをくれていた。
内容は他愛もない普通のメール。
『ラーメン食べた。』
『大阪で仕事。』
『ラジオ出るよ~。』
『オヤスミ』
『美緒から返信がこない』
『美緒生きてる?』
『スタジオで音合わせした。』
『焼き肉食べた。』
『オヤスミ』
『元気出せよ』

1ヶ月分のメールはすぐに読み終わった。
翔君には素直に感謝の気持ちが出てきた。

トキちゃんと翔君は大事にしよう。と心に誓った。

『翔君、ずっと返信しなくてごめんなさい。あたし元気だよ。またカラオケ連れてってね。』

と送信したらすぐ電話が鳴った。

「今からカラオケ行かない?」

「うん、行く」

突然の誘いに戸惑いながらもれる理由がなかった。




タクシーで前に行ったカラオケ店に行った。

店員さんがあたしの顔を覚えていてくれて、翔君のいる部屋まで案内してくれた。

部屋に入ると翔君は立ち上がり私を抱きしめた。
ハグだと思って無抵抗だった。でもハグじゃなかった。息苦しいくらい抱きしめられた。
そして当たり前のように顔を近づけてキスしてきた。

あれ?あたしの頭の中は真っ白になった。

また抱きしめられそうになったから翔君を思いっきり突き飛ばした。

呆気にとられている翔君。

「なんでキスなんかするの?」

あたしが聞いても翔君は答えない。

「友だちでしょう?」

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