wild poker~ワイルドポーカー~

「……千尋ちゃん?」

そんな窺う様な藤谷の呼び掛けに、ゴクリと息を呑んで強く拳を握り締めた。

……ただの気のせいだ。

動揺する自分自身に言い聞かせる様に、心の中で呟く。

するとまるでその答えを否定するかの様に、指輪は悲しく光り続ける。

……俺は帰らなくてはならない。

お前の……お前達の元へと。

そう心の中で呟き、そっと指輪へと指を触れる。

するとそれと共に今となっては懐かしく感じる、幸せな日々の記憶が蘇り、それは静かに俺を奮い立たせた。

……俺はやらなくてはならない。

その固い決意と共にグッと息を呑み、それから思い切ってボタンを押した。
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