wild poker~ワイルドポーカー~

そのまま元居たビルへと戻り部屋の中に入ると、そこにはここを出た時と変わらず、部屋の隅に荷物が置かれたままだった。

その事に少し安堵し、崩れ落ちる様に床に座り込む。

……それからどれだけ時間が経ったのだろうか。

誰も一言も話さないまま、ぼんやりと窓の外を眺める。

暗く陰鬱としたこの部屋の空気とは対照的に、空には眩しい太陽が燦々と光っていた。

それは酷く俺の心を突き刺し、息も出来ないくらいに胸が苦しくなる。

それと共に《あの瞬間》の記憶が生々しく蘇り、カタカタと微かに手が震え出す。
< 323 / 449 >

この作品をシェア

pagetop