wild poker~ワイルドポーカー~
四人とコウモリ一匹で、まるでどこぞのRPGの様な世界の中を進んで行く。
……まるで勇者様御一行みたいだな。
そして大抵はこんなダンジョンの中では、事件やら、ボス戦やら……嫌な事が起こるに決まってる。
そんな事を考えながら、クスリと自嘲気味に笑った。
まだそんなくだらない事を考えていられる《普段の自分》に安堵し、ホッと息を吐く。
それと共にそっと自分の【マーク】を見れば、時刻は《6月26日 18:12》を示していた。
たぶん俺がこの世界に来て、まだ《一日》近くしか経っていない。
それなのに俺はもう、この世界に来る前の自分には戻れない事を、何となく理解していた。
……怖かった。
この世界に居れば居るほど、この世界に染まれば染まるほど……俺は自分を見失って行く。
何が正しくて、何が間違っているのか。
そんな今までは自分の中で線引き出来ていた筈の《答え》が、今は曖昧で、そしてとても遠くにある様な気がする。
少しでも時間があれはそんな事を考えている自分が嫌で、でも考えずにはいられないジレンマの中、ただ須藤さんの後を追う様に歩き続けた。
それから暫く歩くと、ゴツゴツした岩山が急に拓(ひら)け、その真ん中に銀色の機械が見える。