wild poker~ワイルドポーカー~

「助けてくれ!!」

どこからか男の悲鳴の様な叫びが聞こえる。

その声の方へと視線を向ければ、そこには足場の悪い岩道を全力疾走で駆けて行く男の姿が見えた。

男の瞳は絶望と恐怖に支配された様に見開かれ、そこからボロボロと涙が零れ落ち、それは彼の走り抜けたその道に落ちて行く。

「あれは……マズイ!早くこっちに!!隠れて!!」

突然須藤さんはそう言って、茫然と男を眺める俺達を岩場の陰へと押し込んだ。

「な、何が……」

一向に状況が理解できないまま須藤さんを見つめると、須藤さんはそっと男の後ろを指差して見せる。

その彼の指差す先には……灰色の大きな塊が見えた。

しかしそれがすぐに、灰色のボロボロの布を身に纏った男だという事に気付き、ゴクリと息を呑む。

何故ならその男は、泣き叫びながら逃げる男の背中目掛けて……大きな銃を構えていたから。
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