wild poker~ワイルドポーカー~
それから一体どれくらい走ったのだろうか。
不意に後ろを振り返れば、そこにあの《灰色の影》は見えなかった。
「撒いた……のか?」
走る足を止め、そう小さく声を洩らす。
すると手を掴んだままの霧島さんが、その場に崩れる様に膝を付いた。
それを見ながら彼女と同じ様に荒い呼吸を必死に落ち着かせようとする。
……須藤さん達を追って行ったのだろうか。
茫然と走り抜けた岩道の果てを見つめるが、《ジョーカー》が姿を現す事は無かった。
「……助かった……の?」
「分からない。でも、とりあえず進もう。このエリアは危険すぎる」
その俺の言葉に霧島さんはフラフラと立ち上がると、二人で重い足を引き摺りながら歩き続けた。
途中コウモリにジョーカーの事を聞き出そうとしたが、コウモリは《言えない、教えられない》とムカつく笑みを浮かべて、羽を竦めて見せた。
それから暫く歩き続け、エリアの端へと何とか辿り着く。