wild poker~ワイルドポーカー~
「もうすぐ境界線だ。そしたらエリア移動して、何とかあの街エリアに戻ろう」
その俺の言葉に霧島さんは小さく頷き、それから静かに俺を見つめる。
「……手」
「へ?」
霧島さんのその呟きに、思わず声を洩らす。
それと共にそっと視線を落とせば、俺は逃げる時からずっと……彼女と手を繋いだままだという事に今さら気が付いた。
「あ、ご、ごめん!!俺……」
そう言って慌てて彼女から手を離そうとするが、ギュッと強く手を握り締められる。
「……いいの。もう少し……こうしてて」
その霧島さんの呟きと共に、俺は気付く。
彼女の傷だらけの小さな手が……カタカタと震えていた事に。
《あの時》、拘束されていた紐を切る為に、ガラスの破片を握っていた彼女の手は、痛々しい傷になっていた。
元居たビルに戻った時に傷を見せて貰ったが、救急セットすらないあの場では、何の処置も出来なかった。
繋いでいる彼女の手からは微かに血が滲み、それは俺の汗ばむ手を悲しく濡らす。