wild poker~ワイルドポーカー~

「ありがとう。佐伯くんが居なかったら私……きっと諦めてた。ここから生きて帰るコト。さっきも置いて行ってなんて言っちゃって」

そう言って霧島さんは困った様に笑う。

「大丈夫だって。俺達、絶対に生きて帰れる。ううん。絶対に……生きて帰ろう」

そう自分に言い聞かせる様に呟くと、霧島さんは《うん》と短く答え、それからまた……俺の手をギュッと握り締めた。

その彼女の手をきつく握り返したまま、境界線へと向かって歩く。

そんな俺達の姿をコウモリは白けた様なムカつく顔をして見つめながら、俺の周りを飛び回った。

「あれあれ~?もしかして恋の予感とか感じちゃってんですかァ~?知ってる?それって吊り橋効果って有名な……」

コウモリが下卑た笑みを浮かべてそこまで言った……その時だった。

ガチャリと金属の擦れる……不穏な音が聞こえた。
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